「子どもたちが日々過ごす園舎は木造にしてください」それが園長が建築家に最初に伝えた要望でした。「子どもたちが触れるところには本当の木を使って」、「特に床は無垢のヒノキの板張りにして」。発達の最初の段階で自然素材に触れることが大事で、またリズム体操をするために床材とその張り方には特に注意が必要と伝えました。そして建築家と保育士たちでピヨピヨ保育園と同じさくら・さくらんぼ保育を実践している提携園をいくつも見学に行きました。その建築家は元ピヨピヨ保育園の保護者で、旧園での子どもたちの過ごし方はある程度知っていましたが、あらためて保育士たちと望ましい園舎のありかたについて幾度も話し合い、予算や敷地条件なども考慮して、この常磐の地に木をふんだんに使った開放的な園舎を建てました。

 

園庭をはさんで1才以下の赤ちゃんが過ごす乳児棟と、2才から年長までの幼児棟が向かい合っています。どちらも窓が大きくて縁側に出やすく、そして縁側から園庭に下りやすいデザインになっています。できるだけおもてで元気に過ごしてほしいという思いからです。園庭は真ん中に土の山があって、どろんこ遊び場や滑り台がわりになっています。そのまわりは畑の畝状のデコボコの地面です。赤ちゃんに、歩かずにハイハイさせるためです。大きい子でもこの園庭で鬼ごっこで走り回るにはバランス感覚が必要です。はだしや草履のまま水を撒いて泥コネするので毎日全身真っ黒になりますが、ごはんの前には冬でも庭先で水のシャワーを頭からあびて洗います。鉄棒以外に遊具がない代わりに実がなる木がたくさん植えてあり、子どもたちは木登りして実を採って、そのまま食べたりジャムにしたりします。

 

保育士たちの部屋は幼児棟の二階にあります。事務室からは幼児の部屋と園庭、そしてその向こうの赤ちゃんの様子まで見おろすことができます。また幼児室の脇にある調理室は子どもたちの目線に合わせて床を下げているので、子どもたちはカウンター越しに調理の様子をのぞいて「きょうのおかずなにー?」と調理の先生と言葉をかわしたり、自分たちの料理を運んだりします。食育に力を入れている保育方針のあらわれです。